『Symphonic Suite AKIRA』芸能山城組
タグ:サウンド重視, 奇才, 普遍的, 暗黒, 落ち着く, 革命的
| 1994 日本 | |
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| 民族音楽が生むサイケデリック感 | |
| 変拍子マニアも納得のポリリズムの嵐 | |
| 欧米の音楽では味わえない荘厳さ | |
| 世界のレアな歌唱法を集めたカタログとしての充実度 | |
| 総合点 | |
〜伝説のジャパニメーションを伝説たらしめた近未来の民族音楽〜
1988年に公開された映画『AKIRA』。世界中で評価されたジャパニメーションのさきがけとして、その存在はもはや伝説となっています。
2019年、謎の大爆発で東京が崩壊した後、東京湾にできたネオ東京という人工都市を舞台に、超能力者と軍と暴走族と新興宗教と左翼ゲリラがからみあって大暴れする、近未来サイバーパンクSF巨篇。原作は、マンガ界の流れを完全に変えた大友克洋。『ヤングマガジン』に連載されていた当時から話題だった原作を、当時の最高峰の技術で映画化したわけです。
『AKIRA』の魅力っていうと、ものすごく細かくディティールにこだわって書き込まれた近未来のネオ東京の街並み。それに現代と地続きでありながらやっぱり未来っていう、兵器やバイクのデザイン。それらが派手に超能力で破壊される描写。あといろんな勢力の思惑が複雑に交差する人間模様。
そして一番深いところにあるのは、ニュータイプ論にも通じる、人間の意識と覚醒っていうテーマでしょう。まあ、薬の力で人工的に作り出そうという発想は、ファーストガンダムっていうよりは『Zガンダム』的ではありますが。あ、脱線ついでにいえば、近未来の政治機構とか軍事組織、そして都市のあり方についてリアルに構築しきったところは、たぶん『エヴァンゲリオン』にもかなり影響を与えていると思います。
そんな、とんでもない作品である『AKIRA』を映画化するにあたって、音楽をどうするかっていうのはかなり大きな問題だったことでしょう。アニメ界の叡智を集めて作り上げたせっかくの世界観も、陳腐なサントラによって台無しになってしまっては元も子もないわけです。
で、白羽の矢がたったのが、芸能山城組。
芸能山城組というのは、ブルガリアの複雑な歌唱法やインドネシアのケチャなど、世界中の民族音楽を貪欲に取り入れまくり、それらを混ぜあわせて独特の音楽をつくっている、知る人ぞ知る音楽集団です。
しかも主催の山城さんていう人はなんと筑波大の教授だとかいうバリバリの理系らしく、音響テクノロジーの面からも音楽にアプローチしています。実際このCDのライナーにも、それぞれの曲をどんな風な環境で録音したかっていう情報がビッシリ書き込まれていたりして、そういうところもいかにも学者っていう感じなんですよね。
近未来のネオ東京の混沌としたエネルギーや、超能力に関するハイパーでサイケデリックな描写とか、『AKIRA』のそういう多様な要素を彩る音楽としては、最良にして最高の選択だったと思います。
たとえば近未来SFというと、ダークで重苦しいエレクトロ音楽あたりが妥当な線だろうし、ちょっと高尚で深いテーマっていうアピールがしたければクラシック音楽を使うっていう手もあったとは思いますが、そういう手垢のついた手法を取らなかったのは、本当に偉いと思います。近未来の都市のBGMとして、数千年前からある音楽を使うっていうのは、まさに逆転の発想ですよね。
だいたい近未来をイメージして作った曲って、その音楽の鮮度が落ちると急激に陳腐なものになってしまうもので、映画全体の鮮度もそれにつられて落ちてしまいがち。その点、世俗を超えた流行りすたりのない音楽を使うことで、この映画の作品としての鮮度はほぼ半永久的に保たれました。
世界でも稀有な芸能山城組の音楽によって、さらに『AKIRA』が伝説の作品になりえたという面は絶対にあるはずです。
このCDに収められている10曲は、どれもこれも映画の中で強烈な印象を残しています。たとえば、2019年のネオ東京をバイクで暴走する主人公テーマ「金田」。なんと青森のねぶた祭りをモチーフにした曲なのですが、インドネシアの竹の打楽器が刻むリズムとあわさって、混沌とした都市の感じにすごくハマっています。
また、ものすごい超能力に覚醒してしまった自分を持て余すシーンで使われてるのは「鉄雄」っていう曲。インドネシアのガムランと、ドラと、パイプオルガン、そして男声のコーラスを効果的に絡み合わせることで、これまでどこにもなかったサイキックでサイケデリックな世界観を表現することに成功しています。
さらには、幼少の頃を追憶するシーンで使われた曲では、なんと能をやってます。他にも、読経やポリフォニーなど、世界中のいろんな歌唱法が取り入れられていて、圧巻の一枚になっております。
あ、映画『AKIRA』のサントラとしては、これじゃないCDも出ていますが、そっちはセリフとかが中心。芸能山城組の音楽にどっぷり身を沈めるためには、ぜひこの『Symphonic Suite AKIRA』を聴いてください。
ちなみに、音響的にも高レベルなこのCD、テレビのニュース番組なんかでSEとしてかなり頻繁に使われてます。たとえば国会議事堂とか巨大な建造物が「バン!」と出てくる際に10曲目の「未来」の太鼓の音を使ったり、一日中テレビを観てたら1回は必ずこのCDの音が使われてるっていうぐらい。
【『AKIRA』予告編】
2010/06/09 13:11 | カテゴリー:ジャズ / フュージョン / 現代音楽 | trackback(0)
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