『Bangkok Shocks, Saigon Shakes(白夜のバイオレンス)』Hanoi Rocks

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1981 フィンランド
日本人好みの哀愁メロディ #
パンクロックとしての初期衝動な美学 #
グラムロックとしての華やかで刹那的なたたずまい #
アメリカ西海岸メタルの先祖としての存在感 #
総合点 #

~世界中にフォロワーを生んだ甘美で青臭い刹那的なロックは北欧フィンランド生まれ~

北欧フィンランド。
一般的な日本人にとっては「なんか寒そうな地味な国」ぐらいの認識しか持たれていません。 世界的な携帯電話メーカーのNOKIAがあったり、映画『レニングラード・カウボーイズ』のアキ・カウリスマキ監督や、F1ドライバーのミカ・ハッキネンらを輩出してはいますが、正直言ってそれ以外には特に知らないし。
音楽についても、おとなりのスウェーデンがあのABBAやらエイス・オブ・ベイスやらカーディガンズやらを生んだ音楽大国なのに比べ、フィンランドのミュージシャンっていわれてもあまりピンときません。

しかし、今から30年ぐらい前には、フィンランド出身のあるロックバンドが日本も含め世界中で人気を集めました。たぶん、フィンランドから世界に進出した初めてのロックバンドのはずですが、そのバンドというのが、ハノイ・ロックスなのです。


ハノイ・ロックスといえば、あのガンズ・アンド・ローゼズが影響を受けたと公言していることで有名で、日本でも30代以上のロックファンにはそれなりに認知されているはずなんですけど、実はフィンランド出身だっていうことはあまり知られていなかったりするんですよね。
だってバンド名の「ハノイ」っていえばベトナムの首都だし、彼らの代表曲の「マリブビーチの誘惑」はアメリカ西海岸。まるで北欧のイメージはないわけで、アメリカ西海岸のバンドがベトナム戦争のイメージでバンド名をつけたと誤解されても文句は言えないでしょう。

でも、日本のレコード会社の担当者からすれば、せっかくだから北欧のイメージで売りたいと考えるのは当然。北欧といえば、金髪碧眼の王子様的なイメージとか、ヨーロッパの中でも特にミステリアスな雰囲気もするし、そういう部分を全面に押し出して日本のリスナーに訴求したいわけです。
彼らのデビューアルバムに『白夜のバイオレンス』という邦題がつけられた背景には、そんな思惑があったはずです。だって原題は『Bangkok Shocks, Saigon Shakes』ですよ。「バンコクびっくり、サイゴン大騒ぎ」みたいな感じ? ・・・なんでフィンランドのバンドがベトナムとかタイの地名にこだわるのかが全然理解できません。邦題をつけて大成功だったと思います。

概して洋楽の邦題には、イギー・ポップの『淫力魔人』とか、エアロスミスの『お説教』とか、売る気あんのか?っていうものが多かったりしますが、ハノイ・ロックスの件に関しては、わざわざ邦題をつけた意義がすごくありましたね。


まあ、イメージ戦略の大事さっていう話はこの辺にして、そろそろ肝心のサウンドの話をしたいと思います。
先ほども触れましたが、あのガンズ・アンド・ローゼズは彼らに影響を受けたと語っています。またガンズに限らず、1980年代のアメリカ西海岸的なハードロックバンドのスタイルは、ハノイ・ロックスに触発された部分が少なからずあるでしょう。日本でいうと、ジギーなんかは直接的に影響されているといえるし、さらにはヴィジュアル系バンドにもハノイ・ロックスの遺伝子を感じることができます。

では具体的にどんな部分か、ひとことでいうと、「ハードロックに分類するには繊細だし、パンクに分類するには歌心がある」っていう独特の立ち位置だと思います。
ハードロックっていっても、AC/DCみたいなリフでゴリゴリ押していくパターンはちょっと野蛮すぎて苦手。かといってパンクやニューウェーブみたいな思想性はなく、人間的にはあくまでロケンローな美学の持ち主。むしろ、T- REXやデビッド・ボウイのようなグラムロックに近い感覚かもしれないですが、グラムロックにしては、不良っぽすぎる。無理やりたとえるなら、ローリング・ストーンズから黒人音楽の成分を取り除いたような感じっていうか。
あとボーカルのマイケル・モンローの何ともいえない色気も大事な要素。たとえば清春あたりは直系の子孫でしょう。ハノイ・ロックス解散後もソロや新バンドで長く活動し続けたのは彼の魅力のなせるわざ。
そういうバンドってそれまでいなかったし、なんかすごくカッコよかったんですよね。ジャケットに描かれたバラの花のように、華やかでトゲがあって刹那的な感じっていうか。

とはいえ、このファーストアルバムの時点では、正直いってまだマイケル・モンローのフロントマンとしての素質は開花しきっていない感じがします。
むしろこのアルバムで目立つのは、楽曲の素晴らしさ。

アンディ・マッコイという、『パイレーツ・オブ・カリビアン』にでも出てきそうな海賊ヅラのギタリストが書くメロディがですね、顔に似合わず、実に青臭くて胸に刺さるのです。いい意味で歌謡曲っぽい哀愁があり、日本人の心の琴線には触れまくり。

演奏も、初期衝動に満ちた青臭いものなんだけど、そこがまた切迫感というか若さゆえの勢いを生んでいます。「白夜のトラジディ」や「泣かないでセブンティーン」「涙のシャイアン」をはじめ、パンクとハードロックの両方の醍醐味を兼ね備えた青い楽曲が満載なのです。
で大事なのが、今でも決してダサくなってないってこと。これは本人たちの意図ってことではなく、単に奇跡が起きたっていうたぐいの話になるかと思いますが、ダサさを紙一重で回避してます。30年たっても色褪せてない。
ロックスター気取りでチャラチャラしたところがないってことで実はパンク界との距離も近かった。ライブではラモーンズやストゥージズのカバーをやっていたりもしますし。
そういうところも、幅広いロックファンから支持を得た理由のひとつでしょう。

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