『冬の十字架』 忌野清志郎 Little Screaming Revue

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1999 日本
シンプルでラフなのに奥が深い度 #
枯れてしまわないための努力 #
赤裸々だったり上手いこと言ったりの歌詞のセンス #
社会のデリケートな部分への触れ方 #
総合点 #

~「君が代」のパンクバージョンを収録したためにインディーズでの発売に~

2009年に亡くなった忌野清志郎。
1970年にRCサクセションでデビューして以来、40年もの間、第一線で活動し続けたすごい人。言わずと知れたキング・オブ・ロックです。
ロックの世界では、若い頃はとんがったことをやっていた人でも、年をとるにつれてセンスが時代に追いつけなくなってきて枯れていくパターンが多いのに、彼は最期までフレッシュであり続けたわけで、そこがまず本当にすごい。

ではなぜ清志郎だけがいつまでもフレッシュであり続けられたかというと、やはり彼が自分自身をリフレッシュする方法をよく知っていたからなんじゃないかと。

彼はRCサクセションが活動停止してから、基本的にはソロアーティストでありながら、ちょっとしたバンドをいろいろ組んでフットワーク軽く活動していました。どのバンドも、基本的にはメンバーは三宅伸治など気心の知れた面々なんですけど、バンドの名義を使い分けたりするだけで、やってる音は同じ感じでも、どこかしら仕切り直した感が出るもの。

そういう知恵というか工夫を積み重ねて、清志郎はずっと「昔すごかった人」になることを上手に回避してきたんだと思います。まあ、大前提として、もともと人並み外れた情熱の持ち主でものすごく純粋な人だったってことはありますけど、たぶんそれだけじゃなくベテランなりのサバイバル術もちゃんと心得てたはず、っていう意味ですよ。


1999年の『冬の十字架』は、Little Screaming Revue(リトル・スクリーミング・レビュー)というバンド名義でリリースされました。 昭和の匂いがプンプンする日本家屋の茶の間から、ド派手な衣装に身を包んだ清志郎が、憂いをたたえた表情でこちらを見つめているという、印象的なジャケット。自分自身がある意味キャラ化されてるってことを自覚した上で、それを拒絶するでもなく、バカのふりして演じきるでもなく。そういうスタンスが読み取れるジャケですよね。深いです。


このアルバム、何といってもメジャーから発売できずに急きょインディーズから出したっていう点で話題になりました。メジャーレーベルから出せなかった理由は、ある収録曲が問題になったからなんですけど、それが「君が代」のパンクパージョン!

当時はちょうど、国歌や国旗についての議論が巻き起こっていた頃。社会問題やタブーとされている事柄について積極的に触れたがる清志郎は、この問題について、「君が代」をカバーするっていうかたちで言及したのでした。
でも、「君が代」を国歌にすることに反対するような発言をしているわけではないし、逆に「君が代」を崇拝していたりするニュアンスもありません。歌詞もそのままだし。ただただ、「君が代」をカバーしただけで大騒ぎになるような世の中への、痛烈な批判になっているのです。右とか左とかじゃなく、モノが言えない世の中への批判としてのカバーだと考えるべきでしょう。

しかし、こういうときにもっとも大事なのは、その楽曲自体の出来不出来だと思うのです。「君が代」カバーは、話題性だけじゃなく、ちゃんと音楽としてカッコいいのか? そこがしっかりしてないと、ただの話題作りで片付けられてしまいますが、大丈夫。 ファズかなんだかで割れまくった音のギターをかき鳴らして、タイトなドラムが8ビートを刻み、清志郎はいつもの清志郎。そんなロックンロール仕上げなんですけど、「君が代」って、曲としてかなり変じゃないですか。一般的なポップ音楽と違って4小節ごとで区切れないし、繰り返し構造でもないし。だから、ロックのフォーマットにものすごく乗っけにくい。乗っけにくいのに無理やり乗っけてみたら、何とも言えない不思議な構成の曲になってしまったのでした。


このアルバムには他にも、「人間のクズ」「来たれ21世紀」などの気の利いた楽曲が収録されてます。個人的に好きなのが「明日また話そう」。清志郎って書く文章にも独特の味があって好きだったんですけど、この曲は彼の文章っぽい言い回し。
音は全体的に荒々しい出来です。わざとだろって思うぐらい安っぽいサウンド作りに徹していて、生々しい。「偉い人」「昔すごかった人」には絶対になりたくないっていう強い意志を感じます。


【「君が代」ライブ映像】


大阪城ホールだそうです。隣の大きい人は布袋寅泰。しかし布袋寅泰のゲスト参加について彼のルーツとかから深読みしても意味ないと思いますよ。

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